鵞足炎(がそくえん)という症状をご存じでしょうか??
なかなか聞きなじみのない言葉かもしれませんが、足の内側の膝からスネにかけてのあたりに激痛が走るという方は、この鵞足炎を疑った方が良いかもしれません。
今回は、その鵞足炎に関する解説と、似たような症状が現れる変形性膝関節症についてもご紹介いたします。
鵞足炎(がそくえん)とは?
鵞足炎は「鵞足」と呼ばれる膝の内側下方の脛骨の周囲に炎症が生じて痛みがでるものです。
「 鵞足」とは、脛骨というスネの骨の内側(膝から5-7㎝ほど下)に位置し、縫工筋、半腱様筋、薄筋と呼ばれる筋肉の腱が骨にくっつく部位です。
鵞足炎の特徴
鵞足炎で注意しなければいけないことは、初期症状として自覚症状がそれほど強くない点です。
膝の内側にやんわりと違和感を覚えますが、ある程度時間が経過すると違和感がおさまってしまうことが多いので、「問題ないかな?」と何もせずに済ませてしまうことも多々あります。
ただ、そのような状態を繰り返すことで、徐々に運動時の痛みが増していき、ひどくなると階段の上り下りにも支障を来すなど慢性化してしまうケースもあるので。
原因
鵞足炎は鵞足にある「滑液包」の炎症です。
滑液包とは、膝をはじめとした関節に存在する小さなゼリー状の袋です。 少量の液体が含まれており、骨と軟部組織の間に存在し、摩擦を軽減するクッションとして機能します。
この炎症の原因は「膝への大きな負荷」です。
例えば、階段を走って上り下りしたり、坂道ダッシュを繰り返す、さらに体重増加による膝への負荷も原因になります。
鵞足炎は特に、アスリートに多く現れる症状です。
運動前後のストレッチ・準備運動を怠ったり、ご自身に合っていないトレーニングを無理に行うことで膝に負荷がかかり発症することがあります。
さらに、太ももや膝まわりの筋力が低下してしまうと、膝にかかる負担が大きくなり、痛みが起こりやすくなります。スポーツをしていなくても打撲などをきっかけに発症することもあります。
後述しますが、「変形性膝関節症」の人にもよく見られます。
寝ていても痛いことがある?
鵞足炎はトレーニング後だけではなく、寝ているときにも強い痛みを感じることもあります。
このような痛みを「自発痛」と呼びます。鵞足炎では滑液包に炎症が起きてしまいますが、この炎症が強くなると、自発痛が生じるようになります。
鵞足炎に限らずに炎症が強いときには、血管や神経が通常よりも増えます。ここ数年で話題になっている「モヤモヤ血管」というものですが、モヤモヤ血管が増えると少しの刺激や、ただ安静にしているだけでも強い痛みを感じるようになってしまいます。
どのくらいで治る?
鵞足炎になった場合、改善までの期間は個人差もありハッキリと分かるわけではないのが現状です。
安静にして炎症がおさまり始めるまでにも約2週間はかかるとお考え下さい。
とにかく、まずは「安静」です。
ですが、まったく動いてはいけないというわけではなく、普通に歩くなど日常生活を送る分には問題ありません。膝に負荷をかけるような激しい運動を避けるだけで良いのです。
改善方法とは?
鵞足炎は滑液包の炎症であるため、改善法としては、「安静」「アイシング」「抗炎症薬」などがあります。
そのため、僕たち整体師の力では直接改善させることは難しいのです…。
まれに、この鵞足炎の症状でご来店される方もいらっしゃるのですが、病院へ行くことをおすすめしています。
症状があまりにもひどい場合では、痛みや炎症を抑える目的で鵞足周辺に「ステロイド注射」を使用することもあります。
ステロイド注射では症状がすぐに改善することが多いですが、1~2か月で再発の可能性もあり、注意が必要です。とはいえ、何度もステロイド注射を打つのは良くないと思うので、医師としっかりと相談するようにしましょう。
鵞足炎改善のためのストレッチ方法
ハムストリングスのストレッチ
- 床で仰向けになります。
- 痛みのある側の足を上のイラストのように両手で抱えます。
- 反対側の足は動かさないようにしながら、抱えた足を自分のほうに引き寄せましょう。
- 太ももの裏側が伸びているのを感じながら、約30秒伸ばします。
- 30秒×3セットを目安に行いましょう。
内転筋のストレッチ
- 床に座って膝を伸ばしたまま両足を横に開きます。
- 背中を伸ばしたまま、身体を前に倒します。
- 太ももの内側が伸びていればOKです。
- 30秒×3セットを目安に行います。
変形性膝関節症と症状が似ているので注意が必要
鵞足炎の注意点の1つとして、「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」と症状が似ていることが挙げられます。
変形性膝関節症は、膝の内側が痛む疾患で、特に中高年の方に最も多くみられます。一定の年齢を超えた方が、膝に違和感を覚えたり、膝が痛くなってきたりした場合にはこの疾患が疑われます。
ここから、変形性膝関節症についてもまとめていきたいと思います。
あわせて読みたい↓
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症とは、膝の関節の軟骨が少しずつすり減り、歩行時や膝の曲げ伸ばしの際に痛みを生じる病気です。
特に、階段の上り下りで膝が痛む、歩行時の膝の痛みはないが、正座をする際に膝が痛くてできない、といったものが初期の変形性膝関節症の症状です。
さらに変形性膝関節症が進むと、次第にO脚気味になっていき、階段のみでなく平地での歩行にも支障をきたすようになります。旅行などの特別なことではなく、日常生活上で支障をきたすようになると、かなり変形性膝関節症が進行している可能性が高くなります。
変形性膝関節症の原因は?
変形性膝関節症の原因は1つではありません。様々な要因が関係しているといわれています。
- 筋力低下
- 肥満
- 加齢
- 膝への負荷が強い仕事や動作
- o脚
- 遺伝
変形性膝関節症の一番の原因は「加齢」です。
そのほかにも上記のような様々な悪化要因があります。加齢と共に膝関節の軟骨は徐々にすり減っていきますが、ある年齢になっても発症しない方と発症する方が存在するのはこの悪化要因が大きく関与していると言われています。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症は女性に多くみられ、加齢とともに症状でお悩みの方は増えていきます。主な症状は「膝の痛み」と「膝に水がたまる」ことです。
初期症状
起床時や立ち上がり時など、体を動かすタイミングで膝の強張りや痛みを感じます。
立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛みが生じますが、体を休ませると痛みが和らぐため、あまり気にせずに放置してしまうことも多いです。
中期
中期になると「正座」や「階段の上り下り」などの動作で膝に大きな痛みを感じます。
初期段階でしばらく休んでいたら治まっていた膝の痛みも、膝関節の炎症によってなかなかおさまらなくなってきます。
末期
安静時にも痛みがとれず、膝を伸ばすことも難しくなり、歩行が困難になります。
進行度
変形性膝関節症の進行度は、グレード0~Ⅳに分類されています。グレードⅡ以上の場合に変形性膝関節症と診断されます。
変形性膝関節症の進行度分類
- グレード0:正常
- グレードⅠ:骨棘の可能性、関節裂隙狭小化の疑い
- グレードⅡ:明確な骨棘、関節裂隙狭小化の可能性
- グレードⅢ:中等度で複数の骨棘、明確な関節裂隙狭小化、骨硬化、骨端部変形の可能性
- グレードⅣ:大きな骨棘、著明な関節裂隙狭小化、高度の骨硬化、明確な骨端部変形
まとめ
最後に鵞足炎と変形性膝関節症の見分け方をご説明いたします。
特に若い方で「運動直後」に膝の内側が痛み出したら鵞足炎を疑いましょう。そして、40代以上の方で徐々に膝に痛みを感じ始めてきたら変形性膝関節症の疑いがあります。
これらはあくまで一般的な見分け方で、確実ではありません。最近では若い方でも変形性膝関節症で悩まれている方もいらっしゃいます。
膝に違和感を感じたら、まずは病院で診てもらうのが確実ではないかと思います。もしも、このどちらでもないと診断されたのであれば、筋肉の硬直が原因で膝に痛みがでていることになるので、その際はお近くの整体やマッサージサロンで筋肉を緩めてもらうとしっかりと改善されますよ。